買い物をするのが5年ぶりらしい、セーヌ河に架かる橋上でのブロカント。かなり暑い日だった。
去年あたりから頻繁に見かけるようになった、地方(南フランスだったかな)からやってくる女性のスタンドがある。
マリー・クレール誌のインテリア特集に出てきそうな、フレンチ・カントリーサイドな雰囲気で統一されたテントには、次々とお客さんが入ってくる。私はテーブルに置かれた小さなショーケースのガラス越しに、ブローチやボタンなどの小さな品物をしばらく眺めていた。
気になるブローチがあったので、手に取って見せてもらうことに。

三つ果実のさくらんぼが可愛くて、目が釘付けになった。

原型の彫刻の、几帳面な手技が拡大するとよく見える。

こっちはなんだかよくわからないのだが、植物というか、海藻みたいだな。これも空間のはらみかたが上手いので、作家ものなんだろうな。
どちらも1970年代後半から1980年代の品物。さくらんぼの方は、この間の仕事でジャケットを着た時にさっそく添えてみた。
ブローチを買ってウキウキしながら、紙ものディーラーDのところへ。

Dによれば1911年の、パリの地図。いずれにせよRue de Berlin駅があるので、1914年よりは前の地図であるのは確かだ。ドイツに所縁のあるパリの駅名・地名は、1914年に第一次世界大戦が開戦したきっかけでほとんどが消滅してしまったのだ。

欄外に「Gravé et imprimé (版下制作及び印刷)par Wagner & Debes, Leipzig」と書かれている… ということは、ドイツで作られた地図だ!しかもフランスからは遠い東の方の都市Leipzigで。
このWagner & Debes印刷所について少し調べると、ドイツ人のKarl Baedekerによる旅行ガイド「Environs de Paris」を印刷した実績がある。ということは、このガイド本についていた地図という線が濃厚。

ガイド本から切り取られた跡もはっきりわかるし(できればもう少し丁寧に切ってくれるとうれしい…)。
Karl Baedekerによるパリ観光ガイド本は、1907年に出版されている。ということは、1907年の地図?印刷会社によっては欄外に製作年を記録してくれることもあるのだが、これにはない…(本の奥付に書いてあるから省略したんだろうな) ではいつものように、年代を特定する儀式をしましょう。
- Ligne Nord-Sudという鉄道会社の路線がパリに存在したのは、1902年から1931年。
- Rue de Berlin駅は1914年に消滅。
- Martin Nadaud駅(現在のGambetta駅)は1905年1月に開通。
- Chambre de Députés駅(現在のAssemblée Nationale駅)は1910年に開通。
- Porte de Champerret駅は1911年に開通。
- Jules Joffrin駅は1912年に開通。
年代を狭められる要素がこれ以上見つからなかったので、1912年から1914年までの地図ということで。
Dのところでは版画も1枚買った。

南フランスで、まさにこういう感じの修道院の回廊を歩いたことがあるので親近感を覚えたのだが、これはアキテーヌ地方Saint-Émilionの、Cloître des Cordeliersという施設。ユネスコ世界遺産に指定された、中世の建造物だそうだ。

光と影の表現が秀逸。よーく見ると、小さい人物が4人いる。