パリ6区、リュクサンブール公園沿いの道でブロカントが初開催と聞いて、行ってみた。この辺りは、パリに住み始めた当初にうろうろしていたエリアなので懐かしい気分。
出店するのはDだけだと知っていた。めちゃくちゃ暑い日で持参の水筒はすでに空っぽ、彼女のスタンドに着くなり振る舞ってくれた炭酸水がありがたい。
Dはオークションで良い品をどっさり仕入れたところだと、得意げに色々見せてくれた。画廊の展覧会宣伝ポスターのリトグラフ印刷で有名なMourlot社が、印刷所に保管していた最初の最初の試し刷り(これに調整を重ねたのちに納品レベルの印刷物になる)を放出したものだそうだ。そういえば、14年前に買ったゴッホのポスターも、Mourlotの印刷だ。
そのMourlotのポスターの中で、ひときわ異彩を放つ1枚。

この鮮やかな色彩!リトグラフならではの強烈なジューシーさ、オフセット印刷だと絶対に出せない各色のせめぎ合い。
最初の最初の試し刷りなので、版ズレが端っこの方にあったりするのがまた良い。私は業界ならではの業務用品が好きなのだが、こういう社内保管品にも惹かれる。
しかも、あの名門「ギャルリーためなが」である。本家ウェブサイトの展覧会記録からもあぶれてしまった、1980年5月の展覧会ポスター。この版数といい縦長のイレギュラーな判型といい、非常にお金のかかった印刷だったことが伺える。さすが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と世界中から嫉妬揶揄された頃の財力。
2点目の買い物は、版画。

まるで望遠レンズの圧縮効果を忠実に描いたような、パリの風景。セーヌ川に架かる橋がこんな風に一望できることはないはず… でもめっちゃ面白いし新鮮!

作家André Suaresの文章に、Albert Decarisの本物のエッチング作品が添えられた、「PARIS」という書籍の一葉らしい。1949年に250部限定で印刷とのことで、なんだ、思ったよりかなり貴重な1枚ではないか。他の風景も欲しくなってきた、まだ残っているかな。
そして3点目は、地図。

日本がピンク色で、西側の大陸にもピンク色の部分があるので、勘のいい方はお察しのとおり帝国主義時代の地図である。
ヴェルサイユ条約(調印時に日本は中国山東省の旧ドイツ権益を受け継いだ)の後、フランスが約5年かけて調査して作り、1924年に印刷された詳細な地図。

面白いのは各地名の表記法。たとえば九州は「KIOUSIOU」、鹿児島は「KAGOCHIMA」、福岡に至っては「POUKOUOKA」とある。拗音を伴わないサ行はSH-じゃなくてCH-で書かれていたのかなと思ったら、四国は「SIKOK」なんだよな。語頭だとS-で、語中だとCH-なのか??

あれ、でも滋賀は「CHIGA」となっている、語頭なのにCH-だ。なんか当時の地図作成者、適当すぎないか。大阪が「OHOSAKA」で、めっちゃ「オオ」に力が入ってちょっと可愛い。福井「FOUKOUI」は想定内(OUで「ウ」と発音するので)だが、岐阜「GIFOU」はむしろ「GUIFOU」が正しいのでは…
でも若狭湾が「Baie de Vakasa」というのはカッコいいので許そう。ヴァカーサって、なんかどっかの神話の戦士っぽいよ。

旅順口がPort-Arthurという名前だったとは知らなかった。オレンジ色とピンク色がふんわり混ざった部分があるけれど、これは当時まだ微妙な感じだったということだろうか。とりあえず当時の日本地名の表記が興味深すぎて、これを見過ごすことはできなかった。