半年ごとくらいに開催の、Martyrs通りでのブロカント。
この坂道は20mごとに有名なパン屋を抱えていて、いったい何軒あるのか数えるのも怖い。ちょっとしたおやつの誘惑が多すぎる。商店街なのでチーズ専門店や酒屋や八百屋も多いのだけれど、とくにパン屋が目立つ。ただでさえ古くて狭い歩道に、パン屋の入店待ちの行列がはみ出るものだから、まっすぐには進めない。
ブロカントは思った以上に混雑していた。スリに注意、と気を引き締めて見始める。
坂道を降りたいつもの場所に、紙ものディーラーDがいた。挨拶もそこそこに、なんだか素敵な地図を発見!

16世紀のJean(またはJoannes) Jolivetという地図制作者による、フランス国土(に、ドイツとイタリアの一部を含む)の最初の地図だ。当時としては画期的な、木版印刷で頒布されたとの情報を見つけた。私が入手したのは、1960年代に複製されたものだとDは言う。

オリジナルでもないのになぜ興味を惹かれたかというと、この文字のスタイルである。非常に読みづらいが、表情が豊かで魅力的。

めっちゃ中世モードな文字。綴りが今とは違うのが、古いフランス語って感じで良い。ChampagneがChampaigneになっていたり、AmiensがAmyensと書かれていたり、隣国のAllemagneはAlmaigneだったり。当時は今よりも「i」に溢れていたんだな。
そしてパリの存在感の薄さよ… いちおう時期的には、パリに王様が住んではいた頃なのだけれど。

海域に漂う帆船の姿にも時代を感じる。

この地図の作成は1578年、しかし作者のJolivetの没年は1553年なので、彼の死後に印刷されたものだ。

古いフランス語記述で地名が表されているのが興味深くて、複製だけれどこれは買ってしまった(初版はおそらく博物館とか国立図書館に収蔵されているんだろう)。