パリ9区(Av. Trudaine)のブロカント | 2022/04 その2

前日には全スタンドを回りきれないままアイスクリームを食べに行ってしまったので、同じブロカントを再訪。

こんどは駅を出て坂を下り、左折したところからスタート。

どことなく落ち着いたいい雰囲気のスタンド(ガラクタ系の品ぞろえながら物量が控えめで優雅な品出し)で、数年ぶりに見つけたこのアイテム↓

1960s Marque verre

ホームパーティーで招待客が各自のグラスを見分けるための、グラスマーカー。ちょうどパンの包装のクリップみたいな大きさ・硬さで、グラスのステムに挟んで使う。

今回見つけたのは、1960年代当時にフランス国内で発行されていた新聞タイトルシリーズ。9年前には道路標識シリーズを見つけているのだが、

12年前(!)に最初に買ったのが、まさに新聞の名前シリーズだった。懐かしいな。

ホームパーティーしないし、大昔にした時にも使わなかったのだけれど、オブジェとしてめっちゃかわいいので時々眺めて楽しんでいる。


古本とデッサンや版画がカオスに散らばるスタンドで、何やら熱心に絵を選んでいる人が見えた。つられて、私もカルトンに挟まれた大量の絵と版画を物色する(←影響されやすい)。

20分ほどかけて選んだのは、版画2点。

1946? Vicente Cristellys リトグラフ

1点目は、コリーダ(闘牛)を描いたもの。

とにかく牛の造形と表現がすばらしい。全体をセピア調で揃えたような色づかいも良い。永らく額に入れて飾ってあったようで、左端がうっすら褪色しているのすらも趣深い。いかにも適当に切られた白い台紙に、かなり適当に貼り付けた様子も、なかなか真似できるもんではない。

闘牛士の脚元が額装のガラスに貼りついていたのか、少し剥がれている。これがまた、闘牛士が激しく動いた故の砂埃のようにも見え、なかなか良いではないか。

このサインをもとに検索したところ、なんと結構有名な画家の作品であることが判明!

Vicente CRISTELLYS(1898-1970)というアーティストで、同じコリーダを主題にした油絵の小品が、あるサイトでは650ユーロの値がついている。この絵が1946年ごろの制作とあるので、おそらく私の買ったリトグラフ作品もそれくらいの時代のものだ。

情熱的な南欧女性の肖像画が得意だったようで、映画のポスターの仕事もしている。

やっぱりひと目で「うまい!」と思う絵はそれなりのプロの作品で、長く受け継がれて生き残るものなのだな。

そういえばむかしむかし美術大学生のころ。初めてのパリ旅行中にルーヴル美術館で、運悪く引いた風邪で朦朧としながらも、とにかく全作品の前を通るのだと決心して1人で歩いていた時。

ガラガラに空いた上階の小さな油彩画が並ぶ中で、ひときわ目を惹く作品があった。なんだかその絵だけが全体的に光り輝いているような気すらした。おや?と思って近づいたら、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品だったので、その時に「天才の作品っていうのは、体調の悪い外国人の素人の若者が見てもすぐにわかるもんなんだな、すごいな!」と体感して鳥肌が立ったのを思い出す。ああいう経験は、学生時代に得ておいて本当によかった。

もう1点は、銅版画の作品。

まず、マトモじゃない構図が目を惹く。余白を力で押し潰したような、2軒の建物の、しかも上部のみ。

左側はおそらく教会(鐘とステンドグラスがある)、右側も教会の敷地内の建物かな。

手前の塀?(か植え込み?)のラフな表現も相まって、全体的になんだか意味ありげで怖くていい。

左下にE.A.(Épreuve d’artiste)とあるので、アーティスト本人が保管していた作品だ。サインは解読できないけれど、創作者さん、私が受け継ぎましたよ!