Bibliomania | 2018/02

1月に訪れたブロカントで、あるマニアックな印刷物専門スタンドの主から、古書と古い印刷物の見本市Bibliomania(ビブリオマニア)の招待状をもらった。

2月はブロカントの開催数が少ないので、こういう屋内の展示即売会はありがたい。

2年前に行ったカード類専門の見本市Cartexpoよりも、こちらの方が媒体が幅広くて楽しい。縦2mもある特大サイズの昔の劇場ポスターが、あちこちの壁に貼られていて、いつもの屋外ブロカントとは全然ちがう景色だ。

小説の初版本専門スタンド、広告印刷物とノベルティーグッズ専門スタンド、1970年代の男性誌が山積みになったスタンドなど、それぞれに深くて濃い。

まずは招待主のスタンドに寄ってお礼を言い、稀少な自家印刷ミニマガジンを見せてもらう。どれも凝った意匠と印刷でそれぞれに魅力的で、かえって選べない。

ある日本人アーティストによる、アングラポップな画風の特大マガジンは、1990年代にフランス人のマニアの中で絶大な人気を誇ったといい、今でも高値で取引きされるのだそう。

小さな手作り雑誌を夢中で眺めているとスタンドが混んできたので、いったん出て、他を見て回ることにする。

ほどなく、無造作に積まれたカタログの山の中に、見覚えのある表紙が。

ワイン店ニコラ発行のRose et Noirだ!

約2年前に入手したBleu Blanc Rougeに先立って発行された、3部作シリーズ第2巻で、カクテルの流行の風刺がテーマ。

右上が大きく破損しているものの、肝心の絵の部分にはギリギリ被っていない。

ピンク色と薄墨色の、デリケートな階調の美しいこと(この春霞のようなニュアンスが、画像では伝わりにくいのが残念)。

あらゆる画風を完全に自分のものにしていたPaul Iribeは、やっぱり天才だな。

この光と影の表現と人物の表情。ため息が出る。

ニコラ3部作、残るはBlanc et Rougeを手に入れたいところだけれど、これが最高に稀少で、とても手の出る価格ではない。

絵については、このRose et Noirのスタイルが一番好きだな。

別のスタンドで見てひと目ぼれした、影絵人形。

これを厚紙に貼ってから切り抜いて、穴を開けて針金を通して人形にするのだ。
タイトルの「Divers(その他)」という、適当な余りもの的な分類にもシビれる。

フランス語とドイツ語が併記されている。
1880年頃のアルザス地方、もしくは国境近くのドイツ側のものだろう、と店主の男性。

兵隊も、動物も、酔っ払いも、帽子屋も、喧嘩する男もいて、にぎやかな「その他」。「その他」がいないと、なんのドラマも始まらない。