パリ19区(Pl. des Fêtes)のブロカント | 2016/04
いつ雨が降り出そうかという曇り空に訪れた、パリ19区のブロカント。 ![]() 知人がスタンドを出すはず、と、いつもいる辺りの場所を探すと、すぐ見つかった。 私は約3ヶ月ぶり、夫は半年ぶりくらいの再会。 まずは、ワイン店Nicolasの古いカタログを3冊。 カッサンドルによるデザインの1936年版、かなり良い状態だったので2冊目の購入(画像はリンク先の記事と同じ、ここでは省略)。 ![]() そして長らく探し続けていた、これもニコラのカタログで、Darcy作画の1935年版。金箔蒔絵のような表紙は、1度見たら忘れられない。 ![]() Darcyは、ゲランの香水の広告イラストなども手がけていたアーティスト。 ![]() 輪郭線を描かず陰影だけで形づくっているのに、素晴らしく力強い絵。 色数は少ないけれど、彩度明度が計算しつくされている。 雲や樽が反復して描かれているのが、時間の流れや「熟成」というようなイメージを想起させる。静かに何時間でも眺めていたいような画風。 ![]() ニコラのカタログの最後の1冊は、Edy Legrand挿画の1932年版。 ![]() まるで帆布にコーティングをしたような、艶のある粗い紙なのだ。 Edy(本名はEdouard) Legrandは19世紀末のボルドー生まれで、有名作家の出版物に挿絵を寄せたりしていた人気画家だった。 油彩画作品の画像を見たところ、なんとなくゴーギャンとドラクロワを足して割ったような作風だなという印象。 2008年のクリスティーズ競売で、かなりの高値がついた作品もある、と知る。 ![]() こちらもニコラによる、1932年発行の印刷物。 トリコロールの表紙(しかも両面印刷、表紙の裏面もトリコロール)に惹かれて中をのぞくと、なんとも素晴らしいアート作品が散りばめられていた。 ![]() 「Bleu Blanc Rouge(青、白、赤)」というタイトルの、Paul Iribe(ポール・イリーブ)作画。 これはシリーズ第3巻ということで、まだ見ぬ1巻2巻についても調べてみた。 1930年発行の第1巻が「Blanc et Rouge(白と赤)」で、文字通り赤ワインと白ワインがテーマ。 翌年発行の第2巻「Rose et Noir(ピンクと黒)」は、カクテルの流行りを風刺した作品らしい。 3巻セットには相当な高値がついているので、さすがに手が出ない。 ![]() 「日本の皇室印刷所で1から20までの版が特別に刷られ、さらに500部限定で豪華版印刷が作られた」とある(皇室付きの印刷所について調べてみたけれど、三友舎という印刷会社を指すのだろうか?)。 私の手元にあるのは、限定版以外にフランスで刷られた分だと思われる。日本で刷られた20部に、いつかお目にかかりたいものだ。 ![]() 意味深な導入文のページ。 折り込まれている次のページには、小さなウォッカ瓶のイラストと「UTOPIE(理想郷)」「DUMPING(ダンピング)」のタイトル。 ![]() 2つ折りのページを開くと、モノクロの素晴らしい刷りの絵が。 ![]() 2番目には、クラシックな把手つきのビールジョッキのイラストと「MACHINISME(機械化)」「L’OR DU RHIN(ラインの黄金)」の題字。 折りページを開くと、川の急流におびただしい数のドル札とポンド札が浮かぶ、崖っぷちの工業地帯(たぶんビール工場のイメージ)。 なお、「ラインの黄金」はワーグナーが1854年に作曲した楽劇のタイトルでもある(ワーグナー代表作として知られる「ニーベルングの指環」4部作の「序夜」に当たる)。 ![]() 3番目は、ウイスキーのイラストと「IMPÉRIALISME(帝国主義)」「海洋(公海)の自由」がタイトル。 折りページの中には、ポンド札束を両手に掴みながら溺れているジェントルマンと、「BUY BRITISH」の札が貼られた木箱(中身はウイスキー瓶ではないかな)が漂流している。 ![]() 最後である4番目のタイトルはなんと、ミネラルウォーターの瓶のイラストと、「MÉGALOMANIE(誇大妄想狂)」「L’ARBITRE DU MONDE(世界の審判者)」。 折りページは、アメリカ合衆国の摩天楼のシルエットに、両手に銃を構えたギャングが重なる絵。 ![]() で、いきなりカラー刷りになる!
田園風景を窓から眺めつつ、ワインをお供に食事を楽しむ人々の絵。 食卓風景の絵は別紙に印刷されて貼られている。 前半の絵の魔力に取り憑かれ、これは買わねば、と思った。 Paul Iribeはファッションイラストで有名なアーティスト。あのLanvinのロゴマーク(母娘が向かい合っている絵)をデザインした人物でもある。 ![]() 古いハガキも数枚買った。 左上のハガキにArgentonと印刷されているので検索したら、Argenton-sur-Creuseという町のGambetta通りだということが分かった。 蒸気機関車の路面電車が走っていたのが面白い。1904年から1938年まで存在した路線で、この写真はおそらく開通当初に撮られたのだと推定。1905年頃のハガキということかな。 左下は小学校の集合写真。 右上はエビ釣りを終えて、浜に戻る女性たち。 右下も右上と同じ土地で、釣り船が夕方に帰って来たところ。 ![]() 久しぶりにビュヴァー(インク吸い取り紙)も見つける。 長細い方は、Hervé Morvan(エルヴェ・モルヴァン)のイラストが描かれたワインGévéorの広告。 清涼飲料水Vérigoud(ヴェリグー。Very goodから命名)の変形大判のビュヴァーは、切り取り組み立てると紙芝居のような遊びが出来る特別バージョン(紙芝居のストーリーは、子供向けにしてもかなりつまらないのでここでは訳さない)。 ![]() ル・クルーゼのビュヴァーは初めて見た!1920年代のものらしい。 テリーヌ容器、ココット容器、蓋付き片手鍋、万能両手鍋、ポトフ鍋、が当時のラインナップ。ブルーのシリーズにはRoyal、オレンジ色のシリーズにはVolcanique(火山の)という名前がついている。 |