1年ぶりの訪問… ってことはないはずなのだが、買い物をしたのが1年ぶりらしい、5区のブロカント。
自宅を出て最寄駅に着いたら、電車が不通の表示。10分後に復旧予定と書かれているしホームで待っていたのに、その時刻には構内放送で「16時半まで不通」だと!すべての情報を聞き終わる前に早足で改札を出て、バス乗り場へ走った。
案の定みんなバスに乗ろうと集まってきて、乗車率300%くらいのギュウギュウ詰めで出発(我々は座れた)。このバス路線は数ヶ月前に他社に切り売りされたのでRATP経営ではないのだが、車内の内装は激しく壊れているのに応急の補修すらされず、清掃されておらず、降車ボタンが押されているのに停車せず(終点の1つ手前でみんな降りたがるのだ、その方がメトロ改札口に近いから。渋滞で遅れていたし運転手の判断でスキップすることにしたにせよ、ひとこと案内があってもいいと思う)、ぐったりする25分間であった。
バスを降りてメトロ1番線に乗り、6番線に乗り、7番線に乗り換え、なんと自宅を出てから2時間弱かかって目的地に辿り着いたのだった(普通なら45分ほどの道程)。ブロカントに着く前に疲労困憊。
Censier-Daubenton駅を出てすぐ、軍ものディーラーTがいつもの場所にスタンドを構えている。忘れないうちに、さっそく注文品の納品を済ませる。
到着が遅かったし、お客さんで混み合っていたのであまりスタンドに長居せず、先へ進む。大通りの西側を見ながら南向きに歩いていると、なんと私の作るショッパーのピンク色を肩からかけて颯爽と歩く女性と遭遇した。おお、ちゃんと誰かに使ってもらえているのだな!なんだかくすぐったいような照れくさいような、一瞬で全身の末梢神経までビリビリ電気が行き届くような、身体感覚を経験した。You made my dayってやつだね、大変だったけど来てよかった!
大通りの東側へ渡り、紙ものディーラーDのスタンドへ。私好みの、版画のような印刷物を見つけて手に取った。

書籍のページのバラ売りだ。紙質も印刷の具合も良い。

同じ箱の中から夫が選んだ1枚は、ロートレックのような雰囲気のある、シャンパーニュの広告。
私は更にもう1枚選んでいて、


なんか既視感のあるタッチだなと思ったら、ボナールのリトグラフ作品だとDから聞いて納得した。
高校の美術の授業で「好きな絵画の模写をする」という課題が出て、ピエール・ボナールの絵を選んで油絵を描いたことがある。画集の中でも後ろの方に載っていた、わりとマイナーな小品だった記憶。眠たいピンク色やくすんだ水色の表現がうまく模写できて満足したことは覚えている、が、あの作品を私はどこへやったんだろう。
購入した3点とも、美術印刷で有名なMourlot社による印刷の本からの抜粋(=ページのバラ売り)である。(ROGER-MARX Claude, Bonnard Lithographe. 1952, Editions André Sauret, 183 pages broché, 25 x 31 cm.)
Mourlot印刷所関連では、現時点で3点のポスターを持っている。
美術書籍のページとはいえ、Mourlot社が「ボナールが指定したとおりの技術、石版数、色」に忠実に、Grand Vélin Renage filigranéというアート専門の高級紙を使って精密に複製したものだ。なにせ最初に見たときに、オリジナルの版画作品かと思ったくらいである。モナコのAndré Sauret出版社から1952年に発売された仮綴じ本(いわゆるフランス装)。最近ではこういう贅沢な印刷の本の企画がめっきり減ってしまった気がして悲しい。
そういえば子供の頃、月刊誌で連載をもつ有名な漫画家の「複製原画」が欲しくてとても憧れたものだが、あの感じに近いと思う。有名画家ボナールのオリジナルの版画は入手できずとも、ミニサイズの高級複製画を欲しいという需要が、当時あったのだろうな。
このブログを書くにあたって撮影の際に、最初に選んだ1枚の裏面にもう1点、作品があることに気づいた!

この絵も好きだ、なんかとても得をした気分である。
さてこの3枚を選んで、夫とDが何やら盛り上がって話している間に、私は隣のMのスタンドを見に行った(DとMはいつも隣同士で出店する)。
厳選された品物がすっきりと配置されたテーブルに、とても小さな道具を発見。


幅を測定するノギス(フランス語でPied à coulisse)の、携帯用サイズ。全長10cmくらい。

最下部の極小ネジが1つ外れているものの、動きはスムーズだ。木の部分はおそらく柘植材で、定規の白いところは動物の骨か角、その裏面は真鍮板で補強されている。

「隣でいいもの見つけたんだ〜」とDのスタンドに戻り披露する。1910年とか1920年とかその辺りの年代だろうね、と意見が一致した。
以来、いろんなものの厚みを測りたくてしょうがない。