パリ17区(rue de Courcelles)のブロカント | 2017/06

これで2度目になる、17区のブロカント。

古物スタンドにまじって、お洒落なブティックの数々が自店前にテントを出して、シーズン遅れの在庫品をセールする光景にも慣れた。

知人Tのスタンドがあるはずの場所を目指して、前回とは逆方向に進む。
やっぱり同じ場所を陣取っていた。

しばらく話して新しい品物を見せてもらい、半年くらい前から頼んでいたブルガリア軍の調理人チュニックを引き取る。
今日は買う物はなさそうだし去ろうとしたその時、「あれ見てよ、今朝から出すのを忘れていて、何度も売り逃したんだよね~」とTが指差した先に、好みど真ん中のジャケットが吊られていた。

モールスキンのワークジャケット、黒である!
それは売り逃したんじゃなくて、私が来るのを待っていたジャケットだ!

2ヶ月前にブルーのワークジャケットを買ったばかりであるが、さっさと試着してサイズ(42表記なので肩幅42cmのXXS)と状態を確かめ、スタンドの10m先のATMで現金を調達して購入。

Le Super Fermierというブランドタグが内ポケットに縫いつけられている。
ロゴの書体の雰囲気などから察するに、1950年代ごろのものかな。

1度洗濯してアイロンがけしている時に、ポケットの中にオガクズと埃がたくさん入っていることに気づいた。
掃除機で吸ったりテープを押しつけて取ったりした後で、ポケットを裏返した状態で再度洗濯した(最初からこうするべきだった)。
以前の持ち主は、木工内装職人だったのかも知れない。

色落ちの表情も豊かで、雰囲気があって、とても気に入っている。

さて、いいものが買えて満足したことだし、他はさっさと流して帰ろうかなと歩みを早めていたら、「Coucou !(ククー。「おーい」という親しい間柄の呼びかけ)」と呼び止められた。
この声は知っている、紙ものスタンドのDだ。
そのままスタンドに入ってしばらく話していたら、また面白いものを見つけた。

19世紀の日本の美術品50点を、1冊にまとめて1900年ごろに出版された、Documents japonais 50 planchesという画集。
画集と言っても綴じて製本されているわけではなく、厚紙の表紙に50枚が一緒にファイルされているだけなので、Dはそれをバラ売りしていた。

パリの画商兼実業家であり、アール・ヌーヴォーの世界的な流行を牽引したSamuel Bingが監修、日本美術に造詣の深かったGillotが印刷と発行を担当。
1880年から1890年ごろにかけて出版され好評を博した雑誌、Le Japon artistiqueに掲載された作品の、ベスト50点の選り抜き抜粋ムック、といったところ。

表紙に記された販売価格は15 francs、現在の価値に換算すると、なんと5800ユーロ!
当時の富裕層界隈での日本美術人気が、いかに高かったかを表す高級ぶりである。

歌麿、広重の木版画や北斎漫画などの平面作品はもちろん、翁の面、器、絵画、七宝、織物染物、刀の鍔などの工芸品も勢揃いのラインナップ。

これは着物の図案との注釈つき。
勢いのある筆致でのびのびと描かれた植物の様子は、当時のフランス人には斬新だったに違いない。現代の日本人の私も、ときめくよ。

この画集のすごいのは、ちゃんと木版画を木版で再現しているところ。
紙の凹凸がはっきりわかる。どうやら、オリジナルの版を持っていたらしい。



満月を背に2羽の鳥の舞う構図も素晴らしい。