急に寒くなった日の、パリ9区のブロカント。
その昔、町の食料品店のレジ横では、ちょっとついでに買えるような安いアクセサリーが売られていたという。
年頃の娘にお土産だとか、裕福ではない青年が恋人に贈るとか、そういう需要があったのだと思われる。
極小ながらもパールつきの、安い金属製の指輪。
先に見つけて悩んでいたブレスレットよりも、こちらの方を気に入ってしまい、購入した。「1900年頃の食料品店の指輪」という出自に、心をわしづかみにされた。食料品店の指輪!
指輪の下にあるのは、陶磁器の刻印についての書籍「Nouveau Tardy」。
去年パリ3区のブロカントで1冊買ったのと同じスタンドで、欲しいと思っていた3巻、4巻、5巻、6巻を見つけた。
重いしとりあえずは3冊だけ買おうとしたのだが、「悪いこと言わんから買うとき、もう手に入らへんで!この特別号(表紙と中身が上下逆になっている製本ミスの品、よっぽど好きでないと誰も買わないだろうという…)もオマケにつけとくで!」と、関西弁が似合いそうなオヤジさんの押しに負け、5冊すべて運ぶことに。
去年買った巻では、肝心の注釈が「X巻XXページ参照」などと、1-6巻に丸投げされているのに気づいて以来、探していたのだ。
夫がRouenの巻とMoustiersの巻を誕生日に贈ってくれているので、これで9冊そろったNouveau Tardyシリーズ。足りないのはむしろ、これらを収める本棚である。
衣類も少し見つけた。
最奥は西ドイツ軍のウール製セーラー。
1950年代当時はアメリカ合衆国生産(連合軍の軍制期)だったそうだ。
胸ポケットならぬ、みぞおちポケットとも言うべきポケットが1つ、内側の胸の中央についている。襟が取り外せるようになっているのもおもしろい。
左はブルガリア軍の料理人用チュニック。
素材はコットンのヘリンボーン織り(売り主にはリネンと言われたけれど、デッドストックを洗ってみた感じではリネン100%ではないと思う)で、これも1950年代製。料理人用っていうところがいい。
右手前はスイス軍のエプロン、コットン製。
ひと晩考えて、やっぱり最初に見たブレスレットも買えば良かったと思い、翌日の午後に同じブロカントを再訪。
「昨日のブレスレットはもう売れてしまいました?」と訊くと、まだあります、と出してくれた。
1950年頃までは、各地方の「ご当地アクセサリー」が土産物として作られていたそうで、これはブルターニュ地方のブレスレット。手の込んだ細工の銀メッキ製だ。
ブルターニュのシンボルである、マントを着たオコジョが可愛い。
裏にATAO FEALと刻印されている。
Toujours fidèle(常に誠実)という意味の、ブルトン語だった。
祖国ブルターニュに忠誠を誓う、という感じなのかな。
その後、売り主の女性と雑談をしたら、息子さんは日本人女性と結婚しているのだという。