Barjacのブロカント | 2016/03 その1

最近仲良くなった軍物スタンドのG氏が教えてくれた、南フランスのバルジャック村のブロカントへ。

バルジャック村の存在は、数年前に観た映画「未来の食卓」の舞台として知っていた。
劇中のなんとも美しい風景と街並みに、「年老いて田舎に住むような日が来たら、この村がいい!」と思うほどに惚れ込んでしまった場所。
とうとう現地に行けると思うと、とんでもなくワクワクする!

ついでにアヴィニヨン近郊の義父宅に寄って顔を見られるからいいねと思ったら、なんと義父が自ら、1時間半運転して我々を村まで送り届けてくれた。

長距離バスで行くつもりだったのだが、この義父の車がどんなに有り難かったかを後になって知ることになる。私の予約したホテルが、村から「わりと」遠かったことが分かるから。

ホテルにチェックインして荷物を預けた後、義父と3人でお茶でも飲もうと村に着いてみると、ブロカントがもう始まっている!
木曜始まりだと思って、水曜日にホテル入りのプランにしたのだが…
というわけで、軽く休憩した後、さっそく行動開始(確認したら、ちゃんと水曜始まりって書いてあるよ、私の目は節穴か)。

山の上だし、強風ミストラルは吹いていないだろうとの期待は、一瞬で吹き飛ばされた。
暴風にプラタナスの綿毛がびゅんびゅん舞って、まともに目を開けていられない。
髪は綿毛だらけ、黒いジャケットも綿毛だらけ。
半日もいれば、もれなく誰もが花粉症になりそうな具合であった。
しかし、雨模様よりは断然いい。

まず最初の買い物は、特大の緑色の広口瓶。
G. DUPIT BORDEAUX FRANCEという文字つきで、どこも欠けておらず、素晴らしい状態。

似たような1L瓶を持っているのだが、今回買った物は口から腕がすっぽり入って、瓶の内側の底をていねいに洗えるくらいに大きい。とにかく大きい。

液体を入れるだけならこんなに広口に作る意味がないので、何か固形の物が入っていたのではないかと思っていたら、「G. DUPITはラム酒の輸入販売をしていたボルドーの企業」だということを夫が発見。

「ラム酒」でピンと来た、きっとこの瓶、ポンシュ(ラム・パンチ)を作って保存するのに使われていたにちがいない!
ラム酒に砂糖と果物をガンガン沈め、いい具合に漬かったところでレードルですくって、果物ごとグラスに注ぐのだ。

蓋がないけれど、コルク蓋か木の蓋をあてがえば良い。

こ大瓶を嬉々として購入した私を見て、義父は「南フランスまではるばるやって来て、こんな地味で馬鹿みたいに大きい瓶を、なぜ欲しいんだろう」と不思議そうにしていた。
夫は私が文字入り業務用品を好きなことに慣れているので、今さら何も言わない。

2番目の買い物は、これぞ「ザ・民藝」という趣きのある、白いボウル。
分厚くて非常に重いが、欠けなどは無くきれい。1910年頃の物らしい。

釉薬の掛け方もザバーっと適当な感じ。
少々手荒く扱っても、平気そうなところがいい。

ここで、最初に入ったカフェのすぐそばのスタンドで最初に見て、ひと目惚れしてしまったリネン生地を、やっぱり買いに走る。

思ったよりもだいぶ高価だったので、いったん諦めた(私と同時にスタンドにいたイギリス人らしき男性も引き下がっていた)のだったが、あんな好みど真ん中のリネンなんて2度と見つからないと思って、ずっとそわそわしていたのだ。

19世紀のリネンで、もとは袋状の掛け布団カバーだったのが分解されて、平たい状態の正方形になっていた(他の品はみんな袋状だった)。

1枚布ではなく、2枚をハンドステッチでツギハギしてあるところが、また魅力的。
うちの食卓にピッタリな大きさなので、テーブルクロスにする。

近くに見つけた店で昼食をとり(要領の悪すぎるオーガニックレストランだった)、その後、義父は帰路に。
私が買った特大瓶、重いボウル、麻布を車に積んで持って帰ってくれると言うので、お願いした。ありがたや。

ミシュランのビバンダムが描かれた、1960年代の未使用タイル。
4ポーズ7枚くらいあった中から、欠けていないのを2枚選ぶ。
こうして並べると、ちょうど手を繋ぎかけている2人みたいだ。

裏を見ると、スペイン製とある。
ミシュランの修理工場の壁に使われていたんだろうか?
どうやら、かなりめずらしい品みたいだ。

19世紀のムスティエ焼きの平皿。
絵付けなしの白無地の皿を、ずっと欲しかったのだ!
白いのは窯元の職人が自宅用にしていたり、村人の普段使い用だった、と聞いた事がある。

このバッテンのサインは、ムスティエの刻印本にも見つけた。

砂糖菓子のような、美味しそうな姿。

前菜用のラヴィエよりは大きく、大皿と呼ぶには小さめの楕円皿は、19世紀のLunéville窯製。

さて、これらをすべて大事に持って、ホテルに戻る。

村で夕食をとるつもりでレストランを予約してあったのだが、日没前にホテルに着くよう段取りしないとまずい、と夫に指摘されて、キャンセル。

なぜなら、ホテルを予約した時に私がメモした位置情報が間違っていて、村から徒歩10分だと思ったら、4kmだったという!!!ホテルのフロントの人も目を剥くような勘ちがいで、さも気の毒そうに、村までの道のりをていねいに教えてくれていた。

だんだん日が暮れて来る中、誰もいない葡萄畑の1本道を、iPhoneのGPSを確認しながら黙々と前進する2人… 軍隊の訓練か。
街灯は皆無、こんな事態は予想しないので懐中電灯も持って来ていないし、もうとにかく、早足で進むしかない。

途中で道をふさぐほどの大きな水たまりが2個もあったし、初めての道のりで日没後だったら、完全に足を突っ込んでいたと思う。

やっとホテルまで900mくらいかというころ、美しい夕焼けを見られたのは良かったけれど(旅の風景写真はインスタグラムに)。

ホテルに無事に着いて、部屋の機能をひと通りチェックしつつ休憩してから、併設のレストランへ。

2人とも前菜はパスしてメインを取る、とサービスの人に伝えたら、しばらくして別の人がやって来て「どちらのカトラリーをお下げすれば良いでしょうか?」と笑顔で言う。

ナイフでも交換に来たのかと思って「あ、じゃあ私のを」と答えたら、なんとカトラリーを全部下げられた。「えっ!えーっと、私も食べるんですよ?!」と、とっさに制したら、あちらも驚いている。

どうやら、最初に注文を取った女性が何かを勘ちがいして、1人しか食事をしないような雰囲気になっていたらしい。
大人2人で座っておいて、そんなわけあるかい!お陰で大笑いした。
食事は美味しかった。

部屋に戻って、暖房を強めたのにいっこうに暖まらないので「暖房の効き悪いよね。さっき強風にしたのに」とつぶやいたら、「なんかさ、冷たい風が出てない?」と夫。

リモコン表示を確認したら、「Cold」になってる!冷房やそれ!どこで押し間違えたんだ。

部屋が広いしタイル張りなので風を冷たく感じるのかと思っていた。
45分の徒歩で、私もかなり疲れていたようである。

地上階の端の部屋なので、壁からの隙間風が冷たいな、カーテンがもっと分厚ければよかったのにな、と思いながら眠る。
そして翌朝、窓がしっかり閉まっていなかったことに気づいた。そりゃ寒いはずだ。
もうドジ過ぎて自分に萌えた。