ファッションショー用の特注だったらしいブレスレット(ほぼ甲冑)

遠くに引っ越してしまったヴィンテージ服好きの友人がパリに来ていた。ならば、8月にも開いているヴィンテージ服屋を探して案内しようではないか。服好きの同志と服についてあれこれ喋りながら洋服屋に行くのは格別なのだ。誰かと一緒に行く洋服屋、なんて久しぶりなんだろう(友人が少ないからいつも1人で行くのだ)!

パリ北駅の北側のインド人街で南インド料理を食べた後、メトロと徒歩で移動する。

少なくとも1年以上は寄っておらずドキドキだったのだが、店主Cはひと目で私のことを思い出してくれた。

状態の良い品物がビッシリ掛かったラックを順に見て、相変わらずベルトの品ぞろえの良いことに感心し、ガラスケース内に行儀よく並ぶアクセサリーを上から下から矯めつ眇めつ。明るい店内は隅々まで清掃が行き届いていて、ガラスケースにも埃は全くない。これぞ小売店の鑑。

さて、ガラスケースの中に、どうにも気になるブレスレットがある。Thierry Muglerのデザインかと見まごう、ファンタジックでゴツくて強い、物理的にも危険な造形。

「指輪物語」に出てくる山岳風景のような、彫刻作品のようなブレスレット。

思わず「あっ」と声が出るくらい重たい!嵌めたままではキーボード打鍵はおろか、箸すら持てないのでは… 量ってみたら233gもあった。これはアクセサリーと言うのか?もはや武器カテゴリーなのか?

Cによれば、Guy Larocheのファッションショーのステージ用に特注制作された、一般には非売品のアクセサリーの可能性があるとのこと。このブレスレットと同時に、Guy Larocheの2015年のコートを同じ人物から買い取っていて、その筋からの情報だそうで。

ただし、ショーの記録をさかのぼっても、それらしき画像がぜんぜん見つからない。

これだけ主張の強いデザインのブランド品なら刻印があるはずなので、1度しか使わないショー用ピースという話には説得力があるのだけれど。溶接の手わざもワイルド極まりないし。あと、売り物にするには重すぎるよね… 素材はなんだろう、なんかの合金にメッキ?。

店内で何度も試着しては外して眺める。鏡に映る手首がカッコよくて惚れ惚れする。これを嵌めていれば、夜道を1人で歩いてもへっちゃらな気分になってきた(むしろ私のほうが危険人物に見えるのでは)。中学生の頃に飽きずに描いていた、ファンタジー世界のヒロインのコスチュームのことを思い出すね。

というわけで謎の最強魔界的ブレスレットをゲット。

さっそく着けて出かけた。最初は右手首に嵌めていたのだけれど、手を動かすたびに甲を刺してしまうので、流血事件が起こる前に利き手ではない左側に付け直した。