Ted Lapidusの黒いパンツ

ブルターニュ地方からパリに拠点を移してちょうど1年だという、高級ヴィンテージ服ディーラーF。

友人知人ディーラーたちの中でもダントツのポップアップストア開催率を誇る彼が、また新しい場所を見つけたようだ。ずっと休まずにどこかで出店し続けている上に、どんどんレンタルスペースを新規開拓していて驚く。

わざわざお知らせのDMをもらっていたことだし、初日の夕方に訪問した。

入り口は全面ガラス張り、天井がべらぼうに高くて、奥にはロフト。北マレのよく通っている道沿いに、こんなかっこいい貸しスペースがあったとは知らなかった。

高級ブランドのヴィンテージ服しか扱わないFからは、買う機会がなかなか訪れないのだが、見るのは楽しい。アートギャラリーに行って、しかも作品を触れる、みたいな感覚だ。

入店時には私しか客がいなかったので、入り口の右側から順番に壁沿いのラックをゆっくり見る… 最後にチェックした中央のラックで、とんでもないシロモノを発見!

なんじゃあ、このべらぼうにカッコいいパンツは!しかもめっちゃいいウール!

裾を絞ったパンツをずっとぼんやり欲しいなとは考えていたけれど、ここまでカッコいいのは想像できていなかった。Ted Lapidusあっぱれ!時代は1970年代の終盤から1980年代の初期あたりかな。

この、脚の後ろのボタンの行儀よく並んだ様子とかが、けしからん。サイドには便利な大きめのポケットも付いている。

ボタンを外してタックを解放して、イージーに履くこともできる。

一見サルエルパンツ風なのだけれど絞るところは絞ってあって、テーラードパンツとサルエルパンツの間、とでも言えばいいのか。

ウエストの留め金具は、専門家に依頼して付け替えてもらったそうだ。もともと付いていたのはレザー(巻き?)の留め具で、傷みが激しかったとか。

持参のメジャーでウエストを計測… くぅーぅっ、これはギリギリ履けるか履けないかの微妙なライン。試着してみるしかない。

ロフトの階段を上がり試着室へ。この階段の段差が人体モジュール完全無視の代物で、試着して降りてくる時に転ぶんじゃないかとヒヤッとした。

ウエストはギリッギリ閉まった。窒息のリスクなしに動き回るにはもう少し余裕が欲しいところだが、そこは自助努力でがんばるわ、と会計(Fから購入を激しく止められたりしなかったので大丈夫と思う)。秋冬物だし、次の季節までになんとかしよう。決意。

Fはもともとこれを自分で着るために買った、と言う。「僕にはサイズがちょっと小さかったんだよね、だから販売することにした」と。ヒィーっ、がんばりまふ。

言葉を失うレベルで一目惚れの洋服に、ひさしく出会っていなかったのでうれしいな!