パリ15区(Bd. de Grenelle)のブロカント | 2017/02


4ヶ月ぶり
の、15区の高架下のブロカント。

この前週は、知人Tに頼んであったブルガリア軍の料理人用チュニックを引き取りに、木曜日のブロカントに行ったのみ。
週末もどこかのブロカントに行った気がするのだけれど、よく覚えていなくて特に収穫もなし。

目玉焼きの浮き彫り模様がついた、耳つきの小さな皿。
実はこれ、数年前にネットで画像を見つけて欲しくなって、しばらく迷っているうちに(わりと高かったのだ)、別の人に売れて行ってしまった品物。

フランス式エッグベーカーを模したデザインで、白身の少し透明なところとか、細かくリアルに作り込んであって面白い。

底面裏の刻印は「G.D.Paris」。GEORGES DREYFUSで1884年から1928年までに使われたタイプ。
そういえば、同じ刻印のついたパリの観光名所の飾り皿を持っている。

改めてメーカー名で検索してみると、一般家庭用の食器などはヒットせず、観光土産や企業ノベルティー、観賞用のアートピースなどが見つかるのみ。
もしかしたら、そういう特注品の販路に業務を集約したメーカーだったのかもしれない(あまり情報がない企業なので、あくまで推測)。
この目玉焼き皿も、どこかの企業のノベルティー品だったのではないか。

同じスタンドで見つけた、とても小さな器。
石けん置きにしては風変わりで、小さい。傾いているし、何なのかよくわからないところに惹かれる。
食卓でスープや煮物を取り分ける際に使うレードルの、匙部分をのせるのにちょうど良いような気がする。近いうちに無理やり使ってみたい。

ガラス板に白1色で熊の立ち姿と
Der Berner-Mutz, dem freund zum Nutz, dem feind zum Trutz, der Stadt zum Schutz
という文章。ドイツ語っぽい。書体も見るからにドイツ系。

読点はあるのに最後の句点がないので、これは詩とか散文の区切りを表しているのだろう。
読点の場所で改行してみる。

Der Berner-Mutz
dem freund zum Nutz
dem feind zum Trutz
der Stadt zum Schutz

韻を踏んでいることがわかる。これを独仏自動翻訳にかけると、

L’habitant de Berne Mutz
A l’ami au profit
A l’ennemi au Trutz
La ville à la protection

最初は「z」を「s」に間違えたりして変な翻訳にしかならなかったけれど、意味のぼんやり通る文にたどり着いた!

「Berne」はスイス連邦の首都ベルンを指すはず。
ベルンという都市名は、その昔ここら辺の公爵が殺した熊に由来するとか。
ベルン市の紋章は、黒くて強そうな熊の絵である。

「Mutz」がよくわからないなと思いつつ検索すると、なぜか戦車の画像ばかり出てくる。
「Berner Mutz」で調べると、今度は民族衣装姿(チロリアンジャケットみたいな)の男女の画像がたくさん…ということは、きっと何か昔からの伝統あるものの名前だ。
食べ物か、衣装。
で、辛抱強く画像を見ていくと、可愛らしい熊の形のお菓子の画像が1つある!
そうだ、町のシンボルが熊なんだし、熊の形のお菓子くらいあるはずだ。

熊の形のお菓子のサイトの、商品の由来説明らしき文章の一部をフランス語へ自動翻訳すると、「何世紀も昔から時計塔を毎時ぐるぐる回って、ベルンっ子たちにおやつの時間をお知らせする、ベルンの守り神のMutzenたち」というような意味に。

そこで今度は「ベルンの時計塔(Zeitglockenturm)」を画像検索すると、あった!
帽子をかぶった男性の下を、クマの楽隊みたいなのが回るカラクリ時計だ(こういう時、インターネット大好き、と思う)!

次に、「Mutz」に関係ありそうな「Mutzen」という単語で画像検索をすると、主にドイツ語サイトのドーナツみたいな揚げ菓子画像が山ほどヒット。

「Mutze」または「Mütze」では、帽子の画像がたくさん出てきて、お菓子の画像は一切なし。

ならば、このベルンのカラクリ時計に鎮座する男性の帽子が伝統菓子Mutzeの原型で、Mutzenは「Mutz(=帽子の男)と愉快な仲間(熊)たち」くらいの意味ではないか。

最後に、「Trutz」がいくら調べてもよくわからないのだが、人名か地名のどちらかであろう。

ちなみに、
Trutz Simplex oder Lebensbeschreibung der Ertzbetrügerin und Landstörtzerin Courasche (1669年)
という文学作品が、ドイツに存在するらしい。

「DEM BUND ZUM SCHUTZ DEM FEIND ZUM TRUTZ」と刻まれた古いベルンの5フラン硬貨が存在するので、後半の「DEM FEIND ZUM TRUTZ」の部分は、標語とかことわざみたいな定型表現なのか?

「ベルンのMutz 友はNutz 敵はTrutz 街をSchutz」??

…歌、かなあ。時計塔でこういう歌詞の民謡が流れるのかな。
以上が、フランス語と英語の情報からどこまでドイツ語の意味を汲み取れるのかの、壮大な実験。丸1日ほど費やした。
誰かベルンの熊について詳しい人、正しい情報を知っていたら教えてください。

裏と表とにレイヤー分けして彩色してあって、アニメのセル画のよう。
暗い色調の宗教画だらけのスタンドで、これだけが異色な愛嬌をふりまいていた。


追記 :
スイスにお住まいの方が調べてコメントを下さったおかげで、この謎のガラス板の正体が解明!

Fensterwappenと呼ばれる壁掛け飾りで、ガラス窓から差す光に映えるように、ステンドグラスになっている物が多いようだ。
たいていは町名と紋章がモチーフのシンプルなデザインで、これを見て故郷の町を思い出したりしていたのだろうな。地名入り三角ペナントなどにも通じる感覚。

私の買ったこの熊のFensterwappenはステンドグラスではなく白1色での手描きで、なかなかユニークな品物のよう。
材料が不足してこうなったと考えると、戦時中の作品かもしれない。

3日前に書いたブログ記事の、謎のガラス看板。#アンティーク #くま #ドイツ語

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