パリ5区(Av. des Gobelins)のブロカント | 2016/06

毎日ぴったり14時頃と17時頃に、10分間程度の集中豪雨(文字通り以上の豪雨)という、奇妙な天候の続いた週の、土曜日。
「よし、魔の14時さえ避ければ大丈夫だ!」と勝手な計算をして出かけた5区のブロカント。
前回ここに来たのは、もう2年前か。

到着後すぐ、いつも趣味のいい小さなスタンドを構えるL氏に遭遇。

とても好みの品物を見つけてしばらく眺めていたのだが、ちょっと考えてテーブルに戻す(即決しようという価格ではなかった)。

1843年創刊の雑誌「L’Illustrations」の1929年クリスマス号があったので、保護袋を外して、中を見せてもらう。

横30,2cm縦40,3cm、大きくてずっしり重い。

表紙が凝っていて、まるでレザーに金箔型押しを施したかのように見える、エンボス加工。

最初の50ページくらいは綿々と1ページ広告が続く、現代の高級ファッション誌とあまり変わらぬ構成。
車のデザイン、香水のパッケージ、書体、すべてがアール・デコ。

「フランス国立図書館蔵書の革装丁の美」と銘打った特集ページ。

金色が贅沢に使われていて、息を飲むような美しさの誌面が続く。
表紙が革装丁の本に似せたデザインなのは、この特集があるからだ、と理解した。

続いて、日本の浮世絵特集。
この見開きは鳥居清長で、ほかに喜多川歌磨呂、東洲斎写楽などの作品も紹介されている。
コート紙ではなく、デッサン用紙のような紙目の美しい厚い紙に、金色と特色1色で枠が印刷され、そこに別紙印刷された浮世絵が軽く貼付けてある。
なんという手の込んだ贅沢な雑誌。

さらに、印象派画家マネの特集などが続いた後、最後は再び30ページほどの広告(今度はコマ割り広告も混在)。

裏表紙には、チョコレート店Marquise de Sévignéのフルカラー広告。
表紙デザインと同じ装飾枠を使いつつ、違和感のない意匠に仕上げられている。
ただし、エンボス加工ではなく、エンボスのように見える陰影の印刷だった。
遠目には完全に騙される程度にレベルが高い。

「L’Illustration」のモノクロ刷り広告は、切ってバラした状態でブロカントで売られているのをよく見かける。
「このように全てのページが完全な状態で残っている物を見つけるのはなかなか難しい」とL氏は言っていた。

ふと思い立って広告ページの量をページノンブルで確認したら、表紙側で3枚6ページ、裏表紙側で1枚2ページが欠けていた(売り主L氏もページが欠けていることは知らなかったのだと思う、ものすごく綺麗に切り取られている)。
何の広告だったんだろう。

そして、最初に手に取っていったん戻したオブジェも、一緒に買うことにした。
1950年代あたりに田舎の荒物雑貨屋で売られていた、子供用のジョウロ。

ヨットに乗ったカモメの絵がかわいい。
パイプ煙草をくわえているので、見かけよりもオッサンなのかも知れない。

この2点を手に歩き出して数分で、雨が降り始める。
みるみるうちに豪雨になり、近くの建物の屋根の下で雨宿りした。やはり10分ほどでやむ。
前日までと1時間ずれて、15時の豪雨だった。
買ったばかりの雑誌が濡れないように、必死でかばった。

雨が上がってから知人Tの軍物スタンドに辿り着き、面白いコートを発見。

カラフルなスニーカーで有名になったBensimonの、ブランド創設最初期の品。

1970-80年代、若いファッションデザイナーの間で、軍物ヴィンテージのリメイクが流行った時期がある。
ベンシモン兄弟も活動開始初期に似たようなことをしていた、と、Tの仕入れ筋からの情報を教えてくれた。

1940年代以前の軍の作業着用リネンと思われる生地、それを1970年代終盤に流行った細身のルダンゴト(Redindote)風コートにリメイクしてある。
ボタンホールはあるのに肝心のボタンが付けられた形跡がないので、世には出なかったプロトタイプなのかも知れない。
とりあえずボタンなしで羽織っているけれど、ブローチを上手く使って留めるのも良さそう。
素材のラフさとは対照的に、襟が小さくてシルエットが都会的で、そのギャップがカッコいいのだ。


追記 :
某有名古着ショップの情報で、このリネン製のコートが、1930年頃の彫刻アトリエ用コートだということが判明。
昔のアーティストの上着、実はずっと欲しかったのですごくうれしい!
ベンシモンは、ボタンを付け替えるとか何かのリメイクをしようとして、途中で諦めたのかもしれない。元々ついていたボタンは、動物の角製のはず。
私も持っている1940年頃のフランス軍の作業着についているのと、同じボタンだと思う(2016/07/30)。