パリ5区(quai de la Tournelle)のブロカント | 2025/07

約3年ぶりの、5区のセーヌ川沿いのブロカント。

以前とは微妙に開催場所が変わっていて、セーヌ川すぐそばではなく、河岸と平行に走る車道のところ(道の名前は同じらしい)。住民バザーとプロのブロカントが混在で、軍ものディーラーTが出店を予告していた。

夏日で、水筒の水をちょこちょこ飲みながらダラダラ歩いていたら、向かい側から歩いてくるTに遭遇。「あとで寄るよ!」と挨拶をして先に進む。

すると突然、はっきりとデジャヴュを感じる模様が視界に飛び込んできた… この布には見覚えがあるぞありすぎるぞ… もしや!と視線を左にずらせば、折りたたみベンチに掛けて男性2名と談笑するLの姿が!Lのスタンドで何度も見たパラソルの布だったから、無意識に懐かしいと思ったのだ。意識せずに見た模様とか嗅いだ香りが記憶に及ぼす作用って、すごいな。

すぐに声をかけて、抱き合って再会を喜んだ。まさかここに出るとは思っていなかったよ、なんという嬉しいサプライズだろうか。

いそがしく喋りながらラックに掛かった商品を見たけれど、洋服では特に欲しいものはない。卓上の古い石鹸メーカーのロゴのついた箱を開けてみると、文字の刺繍がギュウギュウに詰め込まれていた。色々な文字が混ざっているのかと思いきや、筆記体の「C」しかない。Cは自分の名前にはない文字だもんな… あ、友人にCのつく名前の人… いるわ!

というわけで、大量のCの中からなるべく状態の良いのCを選んだ。帰宅してから部分的に水を霧吹きして重しをしてシワを伸ばし、だいぶ綺麗になったところで撮影。

額装しても素敵だと思うし、なんなら画鋲で無造作に壁に貼るのも意味深でいい。19世紀終盤から1920年代とかの時代の品物ではなかろうか。

そしてさらにだらだらと名残り惜しくLと喋っていたのだが(というかずっとLが面白い話をするのを聞いていた)、ラックの下に小さな布があるのに気づいた。人物と風景が織り込んである。

線に勢いがあって、躍動感のある絵だ。フランス人もこういうかわいい系のキャラクターを描けるんだ… こっちで見かけるのはだいたい、怖いか奇妙か全くかわいくない(注 : 日本の漫画とアニメを観て育った私の視点です)キャラばっかりなので、意外だ。個性や欠点のないキャラ造形が好まれないひねくれた文化なのかと考察しているのだが、でもピカチュウやキティーちゃんのことは可愛いと思っているらしいから、出会いと慣れの問題だろうか。

おとぎ話の登場人物か何かかなと思っていたら、Lが「それいいでしょ、コロンビーヌ!」と言った。コロンビーヌ?洋菓子のコロンバンなら聞いたことあるけど。

調べてみたら、16世紀にイタリアで始まった庶民向け劇場で演じられた役の1つが、Colombina(これがフランス語ではColombineになる)なんだそうだ。役柄は俳優たちの即興で変更され続けたためか複雑で、雑にまとめると「おしゃべりでおっちょこちょいの家政婦が男心を手玉に取って世渡り上手」みたいな感じか。コロンビーヌはアルルカン(道化師)の恋人でもある。若い女性だけど、肝っ玉母さんでもあり、男を惑わす魔性の女でもあるという多面性のゆえ、いかなるシナリオ展開にも対応可能、わかりやすく庶民に笑いを与え、日常の鬱憤を晴らしてくれるキャラだ。

アイマスクを持っているのだけれど、これをつけたら魔性の女に変貌するのかな。

何に使うのか不明なものに抗えず買ってしまった。1930年代の織物は、額装するか、それともクッションのカバーにするか。とりあえずそのままふわっと置いてある。