まったく同じ場所のブロカントは1年ぶりなのか、ちょっとびっくり。もっと頻繁に来ている気がする。
メトロ9番線のVoltaire駅側からCharonne駅の方へと順に見ていく。
あんまり面白いものはなさそう… と思っていたら、なんと、友人のヴィンテージ服ディーラーLが、あるスタンド主と話し込んでいる。 この日に限っては彼女はスタンドを構えているのではなくて、お客さんとしてブロカントに来ていた。なんだかまるで、芸能人のオフの日にばったり遭遇するような確率。
Lからスタンドの主の男性を紹介してもらった。彼女が「黄色いトラックのG」とたびたび話していた、G氏とはこの人だったか。Gという同じ名前を持つブロカンター友人がたくさんいるので、それぞれにニックネームをつけているらしい。ちなみに、私が今まで知っていた唯一のGの呼び名は「ミリタリーのG」である。なんか… ふつうだな。
さて、その黄色いトラックのG氏のスタンドで、小さなオブジェを発掘。
高さ3cmほどの、日傘をさす貴婦人。
裏側には足がついていて自立するので、
使い方(おそらく)。食事の席で招待客の名前を書いた小さなカードを立てるのに、こういうスタンドを使うんだったような気がする。
大きな紙を立てようとするとひっくり返るので、5-6cm角のカードが限界かな。貴婦人だし、あんまり重たいものは支えられない。
なんとなくナポレオン三世の愛妾カスティリオーネ伯爵夫人を思わせる髪型に、ドレスのデザインも19世紀末って感じ(着たらじわじわ死に近づく鮮やかなヒ素グリーン風の色のドレスとか、黒を効果的に使っているあたりとか)。商品としては、20世紀はじめ頃のものかな。昔は流行が伝わるのがゆっくりだったし、人気商品の寿命は長かった。
このあと再度スタンドを一周して、2個目の買い物。
トイレットペーパー。1960年代の、もちろんデッドストック。
デザイン違いのパッケージで2個売られていた中から、より古風な方を選んだ。薄い安い紙が無数に重なって塊を成しているだけで、オブジェとして美しいのがけしからん。
ブランド名に使用されているフォントが心なしかファッション寄りで、レイアウトは余白多めの清潔感重視、グラフィックデザインとしてもなかなか良い仕事なのではないか。
パッケージ最下部のキャッチコピー、「家庭用浄化槽に推奨(浄化槽が詰まりにくいよ、の意味だと思う)」の文字に夫が反応していた。むかしむかし祖父母宅の裏庭にあった、浄化槽のことを思い出したらしい。この手のトイレットペーパーは強度がなさすぎて拭き取り紙としてはまったく役に立たず、家族全員で文句を言っていたと(節約家の祖母は、ロール状のトイレットペーパーをなかなか買おうとしなかったらしい)。
これら2点を買ったあと、Lと一緒に3人で他のスタンドを見て回ることにした… のだが、彼女はほぼ全スタンドの主と知り合いなのでいちいち挨拶して長話になり、まったくペースが合わない。人形とかデスマスクっぽい彫刻とかを買ってそのまま手に持って歩くものだから、お忍びで人間界に遊びに来た魔女か妖精のお供をしているような気分でもあった。