パリ12区(Cours de Vincennes)のブロカント | 2015/07

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なんだか最近この辺りにばかり通っている気がする、またもや12区のブロカント。
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1940-1950年代製のレタースケール。
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誤差はあるものの、ちゃんと動く。何グラムかなと考えあぐねているような錘の移動がチャーミングで、カルダーのモビール作品のように飽きずに眺めていられる。そう言えば、約4年前にも同時代のレタースケールを買っている、私は正確に量れない秤が好きなのかも知れない。
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このメジャーも1940-1950年代製。革製ケースの片面中央についたツマミを起こして回すと、目盛りがスタンプされた布製リボンがクルクルと巻き込まれて行く。家庭用には見えないので、おそらく仕立て屋の道具。
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Bernard Buffet挿画のワイン店Nicolasのカタログ、1962年発行。半年前にカッサンドルによるデザインのカタログを見つけて以来、Nicolasのカタログ蒐集沼に片足を捕われてしまった。
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迫力ある見開きページも。
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Herveticaの長体がかった書体が使われていて、アートディレクション&レイアウトはAlfred Latour。挿画部分はオフセット印刷で文字部分は活版2色刷り、袋とじ製本。表紙には、艶のある黒色がオフセット印刷の上にさらに別版で載せられている。ビュフェの絵と言えば黒の線、印刷物でも黒色の再現に特別な拘りがあったことが伺える。ページによっては6版使用という、ワイン店のカタログ作りにこれ程のコストを掛けていた時代があったのだ。
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こちらも同じくニコラのカタログ、1949年発行。アートディレクション&レイアウトはカッサンドル、パリの街角の挿画を提供したのは当時の売れっ子アーティストAndré Dignimont(アンドレ・ディニモン)。
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カタログに挟まれていたリーフレット。本社が推す高級ワインとは別に、中価格帯の良いワインを薦める趣旨で挿入されたと見える。キリッとした活版刷りの文字の輪郭に惚れ惚れする。
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いかにもカッサンドルらしい書体の選択、余白の扱い。
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店舗掲示用のミニポスターまで挟まっていた。このカタログの持ち主は、ニコラの店主の1人だったのかも知れない。
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さて、続いてニコラのカタログ3冊目。日本の友人Cが先日購入した、原田梨白による挿画の1950年発行のカタログと同じ品。これはいつか欲しいと思っていたので、表紙に「不二」の縦書き文字を見つけて思わず飛び上がった。グラシン紙の保護カバーも残っていて、以前の持ち主が大事にしていた様子が伺える。
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番外編リーフレットや、手書きの発注書などが挟まっていて楽しい。
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この雲と燕の表現の素晴らしいこと。優雅なツバメの舞、ナイーヴな線画の雲、余白の絶妙な配置で表現された抜けるような空。最高級ワインがもたらす感動を、視覚で受け止めて酩酊できる。
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友人の挙げた画像と重ならないように選んだつもりなのだが、やっぱりこのページは外せなかった。
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白地に白を載せる印刷が幼少時から大好物である。よくぞ65年も生き延びてくれたと思う。

原田梨白という芸術家について、フランス語で手に入る情報を調べてみた。1890年8月24日東京生まれ、1954年10月19日にフランスのアルザス地方で逝去。同年生まれにはド・ゴール将軍、アイゼンハワー34代アメリカ合衆国大統領、ベトナム民主共和国初代主席ホー=チ=ミン、舞踏家ニジンスキー、写真家マン=レイなどがあり、陶芸家の河井寛次郎とは誕生日も一致。
絹本彩色の風景画が1点、パリのポンピドゥーセンター内国立近代美術館に収蔵されている(1938年に買い取り)。ストラスブール市立近代・現代美術館(Musée d’art moderne et contemporain)にも1939年作の絹本彩色が1点収蔵、こちらは1954年10月13日、作者の亡くなる直前に買い取られている。その他、Paul Claudel(1868-1955)の詩集「Dodoitsu(都々逸)」(Gallimard出版より1945年刊行)の挿画も残している。おっと、美術品オークションサイトで1937年作の風景画(絹本彩色)が1点出品されているが、推定価格は10万ユーロから50万ユーロだって!
彼はおそらく40歳前後の頃、第2次世界大戦が始まる前にフランスに渡り、戦後もフランスに暮らしたのだと思われる。