パリ13区(Av. d’Italie)のブロカント | 2020/02

5区のブロカントにつづいて13区のブロカントに行こうとメトロに乗ったら、中心部の駅で不審物が発見されたとかでちっとも動かない。

このままのろのろしていると雨が降って来てしまうので(夕方に雨の予報)、地上に出て歩くことにした。

3駅なんてわりとすぐだろうと思っていたら意外に長くて、最後の方ではもう雨が降り始めていた。

この大通り沿いのブロカントに来るのは7ヶ月ぶりだ。

Le Grand Tétras 1960年代アルミ製ゆで卵ケース

ときおり見かける女性のスタンドで、ゆで卵ケースを見つけた。
1960年代ごろの、いかにもキャンプ用品という風情の食器である。

Le Grand Tétras 1960年代アルミ製ゆで卵ケース

このケースのすごいところは、内側に塩入れが付いていること!
店主が張り切って説明してくれた。

ゆで卵には塩が必要だよね、たしかに。実際に塩を入れて使われていたようで、けっこう錆びている。

Le Grand Tétras 1960年代アルミ製ゆで卵ケース

刻印を見ると、Le Grand Tétrasとある。1912年創業の、フランスの家庭用品メーカーらしい。

第一次世界大戦後の1920年代から1930年代、フランスではより軽量な食器・調理器具の研究が行われいていた。歩兵にとっては武器と制服の次に重要な道具で、軽量化すればするほど運搬時のストレスが減らせる。

さらに1936年には有給休暇制度が制定される。都市部で働く労働者たちは車にキャンプ用品を積み込んで海岸に出かけ、休暇を過ごすようになった(富裕層は海岸に別荘を持っているけれど、労働者は車ごと出かけるしかない)。

そんな時代背景も後押しして、Le Grand Tétrasは1950年代にはアルミニウム製食器の一大メーカーとして大躍進した。

1970年代以降は、より軽くてカラフルなプラスチック製品の大量消費の時代になり、Le Grand Tétrasの主戦力であるアルミニウム製の食器は世の中から忘れられ、消えてしまう。

2000年代に入り、プラスチックごみ問題が真剣に議論されるようになった。
そして2019年、Le Grand Tétrasは不死鳥のごとく蘇った!…って、去年の話だ。40年近くを経て、このメーカーは蘇ったばかりらしい。

ゆで卵ケースはアルミ製の1個用と、プラスチック製の2個用を持っている。4個入るタイプは初めてだ。


つづいて、ときどき買い物をする女性店主の衣類スタンドへ。
先週は特にいいものがなかったのだが、今回は何か見つかりそうな品ぞろえだ。

ラックを端から順に見ていると、素敵なワンピースがあった。

1980年代Betty Barclayワンピース

とても分かりやすい、いかにも1980年代なデザイン。

1980年代Betty Barclayワンピース

黒地に茶色の方向ちがいのストライプが効いていて、着ると意外に華がある。

1980年代Betty Barclayワンピース

このBetty Barclayというブランドは、どうやら1950年代から存在しているようだ(今も続いているようなのだけれど、ちょっとデザインは… なんか色々ひどい)。

追記(2021/03/08)
Betty Barclayについて詳しいサイトを見つけたので以下に補足。

ドイツ人起業家のMax Berk氏が繊維工場を1938年に買収するも、第二次世界大戦で破壊されてしまう。

終戦後にアメリカ合衆国を訪問したBerk氏は、そこで若者をターゲットに据えた中価格帯の既製服ブランド、Betty Barclayに出会う。

Betty Barclayは、当時アメリカの服飾業界で大きなシェアを誇っていたJonathan Logan companyが擁するブランドだった。Berk氏は1955年に、ヨーロッパ市場向けのBetty Barclay製品を製造販売するライセンスを取得。

Berk氏はBetty Barclayの妹ブランドとして、Vera Montを誕生させる。Vera Montはフォーマルドレス、イブニング&カクテルドレス、ブライダルファッションのみで構成されるコレクションで、フランスで販売。

1968年には、コート、ジャケット、スーツを提案するGil Bretブランドが誕生。

1972年には本社がヨーロッパ支店に買収され、ドイツ企業となり、今日まで存続している。