日本でのブロカント | 2017

どこに旅をしても必ず寄るのが骨董店と古道具店。
一昨年去年に続いて、今回の日本滞在でもおもしろい品々を持ち帰った。

下に敷いた緑色の布2枚は、それぞれ蚊帳を分解した生地で、金沢古民芸会館で購入した。洗濯したら恐ろしい勢いで色落ちしたのだけれど、一緒に洗った他の衣類には色移りしなかった(本藍染めのシャツを洗った時と同じだ)。

Barrons-Hunterのサーシングル素材のベルトは、東京の郊外の古着店で。

奈良の唐招提寺横の骨董品店では、江戸時代の真鍮の大きな匙を買う。
お寺で使われていた可能性が高い、と店主。
柄の付け根の造形の粗い感じが、韓国の古いスッカラにも似ていて面白い。

追記(2022年1月):
この真鍮の大きな匙は、「ドラサジ」であることが判明。どら焼きの生地を掬って鉄板に落とす時に使う、菓子職人の仕事道具だった。どら焼きの歴史は800年と長いし、奈良には三笠焼きの文化もあるので、古い品物であることは確かなんだろうけど。江戸末期というより、明治時代あたりの品物ではなかろうか。

奈良の餅飯殿商店街にあるお店で見つけた、藍染の綿布。
「油単(ゆたん)」という、嫁入り道具の箪笥の覆いに使われた布だと教わった。元はもう少し緑がかった濃い萌黄色だったのが、何度も洗われているうちに、青みの強い色に変化したとのこと。
幕末ごろの品物だというから、170年くらい前の布だ。

大きな紋がおおらかに染め抜かれている。
ショールとして使おうと思って買ったけれど、室内に飾るのも悪くないな、と思い始めている。

日本を発つ直前にもこの店に寄って、明治時代の櫛を買った。
鳥の躍動感あふれる動きや顔の表情が、とてもかわいい。
日本の絵描きは、動物を単純な線で愛らしく描くのが上手いな。

東京で見つけた、1930年ごろのベルギーの炭鉱夫の上着。
張りのある粗い織りの麻で、薄い金属製のボタンが上の方に2つ、身頃の下半分を占める大きさの内ポケットが2つある。こんなに大きなポケットが必要だったとは、一体何を入れたのだろう… 帽子とかノート?これは本当にカッコよくて気に入っている。

代官山蚤の市で買った、猫に鍵モチーフの極小ブローチ(1950年代ごろのものらしい)と、パリ市の紋章入りチャーム。

ブローチの猫は本当に小さくて、頭部の幅が3ミリほどしかない。失くさないように気をつけなければ。

今回の「アチコチズ」ポップアップストアでは、さつま人形の「やっこさん」を買った。

DMデザイン用に画像を受け取った時から気になっていたのだが、実物はさらに愛らしかった。

頭がポテトマッシャーみたいで面白いし、角度によっては「サタデー・ナイト・フィーバー」のジョン・トラボルタっぽくもあり、天才的な造形センスだと思う。

同じシリーズの他の人形たちは直線的な形で原色使いなのに、やっこさんの彼だけが際立って動きのある表現で、彩度も抑えめの色調である。

やっこさんは身分の低い雑用係だけれど、この人形の作者は、やっこさんをかなり好きだったんじゃなかろうか。

アチコチズのCの仕入れる彫像類はいつもセンスが良くて、選ぶのに困るほど。
初日の朝イチで売れて行ったアザラシもかわいかったな。

父と3人で奈良東大寺の二月堂散策に行った日、道沿いに骨董品店があるのを見つけた。

こんな見るからに正統派の骨董品店には、私の手が届くような品物はないだろうから、目の保養と勉強のつもりでガラスケースの中を順に眺めていたら、とても愛らしい姿の彫像がいた。

店主と思しき男性から、300年ほど前の木彫りのお地蔵様だという説明を受ける。春日大社の御神体のうちの一柱の由来はお地蔵様、という興味深い話を伺いつつ。

お値段を尋ねると、想像したほどには高くないので少し驚いた。
まだ他に寄る予定の場所もあったので、とりあえずその日は立ち去ることに。

日本を発つ前日、やっぱりもう1度あのお地蔵様を見ておきたいと思い(実は3日間ずっと考えていた)、また奈良へ。もし店休日だったり、すでに誰かに売れてしまっていたら、ご縁がなかったと諦めよう、とドキドキしながら到着。

お店は開いている、お地蔵様もまだ同じ場所に!

ガラスケースから出して見せてもらってびっくり、背中側の色彩が見事な状態で残っているではないか。前面の足元には金彩の名残も見られる。
そして何と言ってもやはり、お顔がとても愛らしいのだ。

台座含め12cmのスリムなお地蔵様は翌日、手荷物で一緒に飛行機に乗って、フランスに上陸することになった。

こちらの器は、中国のアンティーク品。
数年前に母が上海で買い求めた品を、譲り受けた。
鈴虫が虫籠の中で水を飲むための器で、鉛筆と比較すると、その小ささが分かる。

小さな小さな器にていねいに描かれた風景。
この器で味わう水は、さぞおいしかったであろう。