パリ20区(rue des Pyrénées)のブロカント | 2023/04

ちょうど1年ぶりの、20区のブロカント。

このメトロ11番線のJourdain駅周辺は、雰囲気が良い。駅前の少し高い場所にある教会から緩やかな坂道を下る途中に、チャーミングな個人書店が2軒、ビオ食品の店、花屋などが静かに並んでいる。

友人ディーラーたちは、少しひらけたSquare Henri Malbergに出店していることが多い。この日も例外ではなく、みんなその広場にいた。

最初に入ったのは、2人のFが仕切るヴィンテージ服のスタンド。この物量を細い女性2人でどうやって運搬して設置するんだろうと、いつも不思議に思う。搬入出を手伝ってくれるアルバイトがいるんだろうか。

ラックを順番にすべてチェックし終えて、さてもう次に行こうかと思ったら、テントの梁にかかっている白いジャンプスーツ2着に気づく。ただ白いんじゃなくて、ロゴがプリントされている。

(白バックだと見づらいのでグレーにした)

ラジオ局のEurope 1や週刊誌「Paris Match」「L’Expansion(2017年廃刊)」など、マスコミ大手の社名ロゴ。Pernod Lightなんていう商品が当時はあったんだね!1985年のCMが面白いのでぜひ見てほしい。

背中には同じ企業ロゴと、Pernod Light Trophéeの文字が。ペルノー杯という大会のためのユニフォームだったことがわかる。

そして、Londres – Le Touquet – Paris – ULMの文字。隣国の首都ロンドンを出発し、フランスの海辺の街ル・トゥケを経由してパリにゴールするコースだったのだな。

2着のうち小さいサイズの方の股上プラス背丈の長さをメジャーで測ってチェックして(ツナギは上半身部の長さが最重要、裾は短すぎない限りなんとでもなる)、着られそうと判断してディーラーFのところへ。

彼女によれば、「1984年にフランスで初めて開催されたULMグランプリのジャンプスーツ」とのこと。

ULMってなんじゃいと思ったら、夫にはすぐ分かったらしい。さすが飛行機ファン。Ultraléger motoriséの略称で、日本語では「超軽量動力機」。エンジン装備のハンググライダーと言った方がピンと来るのかな。

値段を訊いたらけっこう高い。じゃあ… ひと回りして戻ってくるよと言ったら、値引きを提案してくれた。そうと決まればさっさと現金を下ろしてくる私。ATMの場所も熟知している。

さて、帰宅してからはいつものように調査開始。

1981年創設のフランスULM連合のサイトには、記念すべき第1回グランプリは1983年だったとの記載がある。ほほう、じゃあFの言っていた1984年ではなくて、1983年なのかな?

さらにネットの海で検索していたら、1983年開催のグランプリの様子を撮った動画を発見。

3分46秒前後で、大会公式のツナギを着た参加者たちが映る… のだが、あれ、これじゃないな、私が買ったのは。Pernod杯の文字がないし、第一にデザインがちがう。じゃあ1983年ではないのだな。

さらに調べる。今度は、昔ULMのパイロットをしていた人々の思い出サイトみたいなのを発掘。

1982年にもLondres-Le Touquet-ParisのULMグランプリがあったらしい。が、これはECCO杯と言う名称だ。サイトにあったPDF資料を全て見たけれど、ツナギのデザインもちがう(ラジオRTLが協賛している)。

じゃあやっぱり1984年という開催年が正しいのか。でも資料がひとつも見つからないんだよね。

INAのアーカイヴにあるPernod LightのCM(上に挙げた)は1985年6月のもの。新発売時にガンガン打ったTV広告だったと考えるのが自然な気がするので、Pernod杯は1984年か1985年あたりだったのでは?

ペルノー社はいろんなスポーツ大会を協賛していたのだが、ペルノー杯で探してもULMについて書かれた資料がヒットしない。Fの言うとおり、1984年の大会がPernbod杯だったっていう仮説を今のところは採用する。

ファスナーはAiléeという、おそらく初めて見るフランスのメーカーのもの。1957年から1987年まで実在したらしい。

毎年楽しみにしている航空ショーがもう時期なので、これを着ていくぞ〜(雨だったら白は汚れるからやめとくけど)。