パリ10区(rue René-Boulanger)のブロカント | 2023/04

前回の訪問からは約半年ぶり、10区のレピュブリック駅周辺での小さなブロカント。

衣類を売るスタンドは3つくらいしかなかった。

最初に見た時には混んでいたので素通りして、復路でやっと入れたAのスタンドで買い物。

彩度も明度も色相もズバリ好みの、人工芝色のスカートを発見!

珍しいスウェット地でふくらはぎ丈、サイドにポケットまで付いている。優等生か。

こりゃどう見ても1980年代だよねと思って内側のタグを見れば、イギリス生産のSt Michaelのロゴが。

St Michaelの服を見つけたのは初めてではない(たとえばこれ↑)のだが、イギリスのMarks & Spencer百貨店の創業者の1人であるMichael Marksの息子が、父親の名を讃えて1928年に作ったブランドがSt Michaelだということは、今これを書いていて知った。3年前にはこの情報にはたどり着けなかった、当時もけっこう細かく調べたつもりだったんだけどな。

なるほど、St MichaelはMarks & SpencerのPBだったのか。2000年にブランドごと整理されてしまったようで、St Michaelブランドは現在ではもう影も形もないはず。

合わせたい服もすぐに思いついたし、これは買うしかない。

さて支払おうとスタンド主の方へ近づくと、地面に置いた巨大なバッグから追加の品出しをしている… あっ!そのいま手に持っているパンツの色めっちゃ好み!

「すみませんそれ見せてもらってもいいです?」と食いつき、状態を確認して即決。

カタログ通販で有名な、3 Suissesの品。

ほぼ未着用だと思う。タック入りのテーパード、脚長で品良くシュッと見える形である。先に見つけたスウェット地のスカートよりも青みがかったグリーン。これぞ私の溺愛する80sグリーンなのだ、食べたら毒が回りそうな色味の。

これまで3 Suissesのことを「スイスの通販カタログ」と思い込んでいたのだが、実はフランス北部の企業だった。

3 Suisses社の創業は1932年と古い。社名の由来を調べてみたら、国名のスイスとは全く関係がないのが笑える。

起業当初、事務所の近所にあったビストロの経営者がSuis(スュイ)という名字の男性で、彼には3人の息子がいた。ビストロの常連客は、店に行くことを「3 Suisses(3人息子のいるスュイさんなので、ふざけて語尾を複数形にしてみたら国名のスイス——フランス語綴りでSuisse——と重なって面白かったんだろう)に行く」と言うように。その、地元の人にしかわからない超ローカルな食堂の内輪受けの愛称を、社名に採用したってことらしい。なんかふざけていてこういうノリ、好きだわ(かくいう私もふざけた名付けのサイトとブログを運営している)。

既成服のカタログ通販を始めたのは1949年というから、フランス人がみんな知っているメーカーであることにも納得。

ジッパーにはTiTの刻印が。見たことないので調べたら、イスタンブールで1976年創業のTitbasという企業だった。

現在の顧客リストにはファストファッションの大御所がずらり。なるほど、1980年代にヨーロッパでのカタログ通販最大手メーカーだった3 Suissesは、Titbas社創業当初の大顧客だったんだろうな。

1980年代といえば製品の縫製はまだフランス国内で行われていたけれど、ジッパーなどの部品や材料生地の輸入割合が大きくなり始めていた時代なのが伺える。

同色のパンツを私はすでに2本も持っているので、これは秋のポップアップストア用の仕入れ。