パリ12区(Cours de Vincennes)のブロカント | 2017/02

半年ぶりに訪れた、Cours de Vincennesの12区側のブロカント。

この日も午後かなり遅くに出かけて、知人Lに「こんなに遅く来たら何も残っていないぞ」と言われた。でもちゃんとあった、私の好きなものが。

小さなメモ帳を5冊と、密閉保存瓶Le Parfaitの説明書兼レシピブック。
メモ帳の表紙は広告になっている。左上が靴底メーカーSEA(縦開きに無地用紙)、隣り合う残り3冊は鎮痛剤Gennau(横開きに方眼紙)。うっかり裏表紙を撮影してしまったSEAのメモ帳の表側には、大きく靴底のイラストと「フランス製品を使うことは国民の義務」のキャッチコピーが。1930年代後半、第二次世界大戦を控えて世論が保守に傾いていった時期だったのだろうな、と想像。
画像中央は、現在では国際石油資本「スーパーメジャー」の一員であるTOTAL社のもの。1924年にCompagnie Française des Pétroles(CFP、フランス国営石油会社)として政府により設立され、1929年には石油鉱脈の開発・採掘を目的として子会社Compagnie Française de Raffinage (CFR、フランス国営石油精製会社)も設立し、同年に上場。このメモ帳にはCompagnie Française de Raffinageとあるので1929年以降の品だ。子会社CFRが、ガソリンスタンド経営者用に配布した、簡易注文票か領収証の類だと思う。

保存瓶Le Parfaitの看板商品「Super」が表紙の3色刷り小冊子は、中身のレイアウトも素晴らしい。本文組みの書体は1928年生まれのGill Sansで、目の粗い紙に小さな文字でも可読性が高い。
「センセーショナル!開けるのも、閉めるのと同じくらい簡単」という宣伝文句が表紙に踊っていたが、なるほど、これ以前の保存瓶は開けるのに苦労した代物らしい。冷蔵庫が広く普及する前の時代、田舎の一般家庭では、1年分の瓶詰保存食作りが夏の大仕事だったと聞く。上質で頑丈なガラス製の保存瓶は重宝されたのだろうな。Le Parfaitは1930年代発足の企業なので、この冊子も1930年代後半の品であろう。

エールフランスの機内食用カトラリーを3種11本。
Raymond Loewyのコンコルド機内食用カトラリーを数ヶ月ぶりに見つける。ナイフ・フォーク・スプーンの3本セットにするためにどれがいくつ足りないのかを毎回失念するので、いつまで経っても気持ちよくセットにならない。

白い柄の方は普通のAir France機用らしいが、なぜかLoewyデザインのものよりも高かった。Lに理由を訊くと「こっちの方がレアだから。デザイナーの名前なんだっけ… 忘れた、でもローウィーと同時期(1975年以降)くらい」と言う。それにしてはデザインがモダンすぎないかと思って調べてみたら、Radi Designersというパリ拠点のデザイナー集団による意匠で、2000年のAir FranceのTempo(ビジネスクラス)機内食用のカトラリーだった。17年前の品ならもっとたくさん出回っていても良さそうなのだが、調べてもなかなか見つからない。なぜだろうとしばらく考えて閃いた、2001年9月11日のアメリカの飛行機テロ事件のあと、エコノミークラスの機内食のカトラリーのプラスチック化が一気に進んだんだ、そういえば(機材軽量化の為に金属製カトラリー廃止の傾向はあったけれど、あの事件後、加速的に進んだと思う)。すると、このRadiデザインのカトラリーは2年弱ほどしか使われなかったのだ、そりゃレアになるわけである。

銀器の老舗クリストフル社による、ファーストクラスのナイフ(ステンレス製)も、なぜか上記のRadiのカトラリーと同じ値段で売ってくれた。Lはいったいどういう基準で値付けをしているのか、たまに謎に思う時がある。