日本でのブロカント | 2016

今回の旅で見つけた古い物。

奈良の商店街の中にある古物商で、業務用らしき、塗りの盆がバラ売りされていた。100年ほど前の品物だという。

旅館で使われていたものかと店主に訊くと、盆を裏返して中央の図を確認し、「おそらくお寺で使われたものだと思います」と。

なるほど、改めて調べてみたら、これは根来盆というものなのか。
方形の角を切った簡素で幾何学的な造形、実用に耐えるよう厚く塗り重ねられた漆、とても好みの品である。もう1枚買っておけばよかったかな、でも1枚だけ持ち帰って来るのも大変だったんだよね…

実を言えば、専用の収納木箱ごと欲しかったけれど、さすがに気軽には持ち帰れないのであきらめた。

根来盆の下に敷いたのは、東京代官山蚤の市で買った、フランスの19世紀のリネン生地。春に南フランスのバルジャック村で購入したのと同じで、元は寝具カバーだったものをバラしてあり、細長いテーブルクロスとして使える。
端の方に少し目立つシミがあったせいなのか、やたらと安かった(南フランスで買ったものより安い!)。
1度の洗濯でシミはほぼ目立たないレベルにまで抜けたし、とても良い買い物をした。

黄色いベークライト製ダイスは、「アチコチズ」用にCが買い付けたもの。

ポップな見た目を裏切る意外な重量、両手で交互に握理しめていると、自然に瞑想できそうな気分になる。不思議な密度である。これはCが言っていたとおり、実際に手に持った人としか、分かち合えない感触。
黒い方は早々に売れてしまい、残った赤と黄色とでさんざん迷い、この黄色に。

ダイスの上に乗っているのは、奈良の雑貨店で買った、一刀彫りの恵比寿さん。
左手に鯛を抱えている。

夫は恵比寿さんと大黒さんがなぜか好きで(おそらくきっかけはヱビスビールの缶の絵)、これをたいそう欲しがった。
「アチコチズ」でCが出品していた恵比寿と大黒のコンビの木彫り像が買われて行った時に、ふと悲しそうな顔をしていたのを私は見たぞ。
いや、私も欲しかったけどさ、鳥の餅型とか…

こちらもCの買いつけ品から、ボーイスカウトのターゲット・バッジ(チャレンジ・バッジ?)2個よりどり500円。蛇とトナカイ(鹿なのかも)を選んだ。
バッジとかワッペンって、つい集めてしまう。

今回の案内DM制作で画像切り抜き作業をしていた時からのお気に入り、UAT航空会社の旅行鞄型ステッカーもゲット。

UAT(Union aéromaritime des transports)社は1949年設立、1960年代にTAI (Transports aériens intercontinentaux)社との合併を経て1963年にUTA(Union de transports aériens)航空会社となり、1989年末にAir France社に合併吸収された、今は存在しない企業。

去年のペナントといい、DMの中央に据えた品物を毎回、記念に買えている。

そして、東京の古着店で出会った大物、フランス軍の作業着1882年モデル!

少し前に1895モデルの作業着をフランスで買ってから、より古く、幻のヴィンテージと言われる前モデルM1882のことが気になっていた。なんと、東京にあったよ。しかもデッドストック。

Équipements militaires刻印の平たいネズミ色のボタンではなく、Mode de Parisという刻印のされた、立体的なボタンがついている。

調べてみると、これも19世紀後半に軍用衣料に広く使われたボタンで、将校階級のボトムス類に見られることが多いという。
となると、この作業着は将校用だった可能性もある。

HCの文字は所属部隊の略称なのか、着用者の名前のイニシャルなのか、謎。
所属部隊の略称でCHRというのはあるんだが(Compagnie Hors Rang)、HCは見つけられなかった。病院関係かな… そのうち誰かに訊いてみよう。


追記 :
元潜水艦乗りのGに見せて「HC」について訊いた。

ボタンの刻印から将校階級の持ち物の線も濃厚。
ただし将校には、通常は作業着を支給されない(雑用はしない)ため、何か特別な事情(部下なしで遠征、とか)で、備品として持っていた1着かも知れない、と。

さらに、軍隊用語の略語で「HC」には心当たりがないので、持ち主の氏名のイニシャルだと思う、とも。
将校の名前入り予備作業着、かつ終始使われることがなかった、と考えると、つじつまは合う。


追記その2(2019年7月) :
あるディーラーがこれと同じ品物を紹介しているのを見つけた。
HCはHôpital Complémentaireの略だそうで、やはり軍病院勤務者(おそらく医師以外の補助員用)の作業着だった。