航空ショー「Meeting aérien」| 2016

年に1度の開催の、航空機ファンの祭典「Meeting aérien」を初体験。

昔の飛行機を間近で鑑賞し、それらが実際に飛ぶ勇姿を仰いでプロペラ音を聴き、曲技飛行の世界チャンピオンにサインをもらい、盛りだくさんで大興奮の1日だった。

夫の元同僚で大の飛行機マニアのフランソワと、RERのB線Laplace駅前で朝早くに待ち合わせる。

車で高速道路と国道を走ること約1時間。
会場であるCerny飛行場の入り口には、すでに入場待ちの車の行列が。
駐車場に入るまでに30分ほどかかった。
午後になるとさらに渋滞するので、朝のうちに着くのが正解なんだそう。

週末の2日間で入場者4万人を数えるという大人気のイベントは、今年で44回目を迎えた。

この規模での一般向け航空ショーを定期的に開催するのは、ここパリ郊外の他には、イギリス(ロンドン郊外)だけだとか。

来場者は年々増える一方で、飛行場周辺の雑木林が切り開かれ、どんどん駐車スペースが増えていっているのだ(2016年時点で収容台数は1万台)と、毎年欠かさず参加のフランソワ談。

小高い丘の上に位置するセルニー飛行場は、映画の墜落シーンの撮影に度々使われるという(雑木林に向かって着陸する様子を撮影してCG処理すれば、実機を全く傷めなくて済むから。「007」の撮影もあったらしい)。

RERのD線La Ferté-Alais駅から徒歩で来る場合は、軽い山登り状態になる。

折しも数日間の雨のせいで地面がぬかるんでいて、駐車場で車を降りて20歩くらいで靴がドロドロになってしまった。登山用の靴を履いてくるべきだった。

9時から12時までは、地上に並ぶ航空機を間近に見られる。

芝生の滑走路にズラッと並ぶ古いマシーンは、壮観である。

日本の零戦もいる!

これはT-6という飛行機のパーツを元に、零戦仕様に作られた映画撮影用の機体。実際の零戦機よりも少々胴が短いながら、かなり忠実に再現されているとのこと。

曲技飛行ソロの世界チャンピオン、フランス空軍曲技飛行チーム所属のAlexandre Orlowski氏にサインをもらっているところ。

さらに、この近くで大勢から次々と撮影をねだられている白髪髭面の小柄な男性がいた。

「世界中に存在する航空機は全て操縦した経験あり」という、まさに天職が「ザ・パイロット」なムッシュー、Jack Krine氏だとフランソワが教えてくれた。レジオン・ドヌール勲章も授与されているとか。

これは水陸両用機。
主翼の先からぶら下がるのが降着用の浮き輪で、格納式。

この飛行機の主翼下に並んだ櫛の歯のようなものは、落下させたい物体を引っかける突起。

自身が電車のメカニック技術者でもあるフランソワが、全ての飛行機のエンジンや、見えない構造のちがいについて、分かりやすくレクチャーしてくれた。

毎年通う熱心なファンは、開場の朝7時半から滑走路横の陣取りに余念がない。
天体望遠鏡みたいな長いレンズを抱えた人々が、足場を組んで撮影の準備をしている。キャンピングカーで泊まり込む人もいれば、自家用機を操縦してはるばる飛んで来る人もいる。

クラシック機体の時代に合わせたコスプレ姿も、少なくない。
ナチス時代のドイツ将校姿の人を見かけたが、鉤十字は公の場では禁止なので、さすがに非着用(ドイツ機体の鉤十字ペイントも検閲され、上からシールが貼られていた)。

ミリタリーオタクの男性が多いのかと思ったらそうでもなくて、来場者の男女比率はざっと半々くらい。
幼児から老人まで年齢もさまざま、車椅子の人も数名あった。
持参の簡易スツール(持っていない人の方が少ない)に腰かけて、飛行機を眺めながらピクニックを楽しむ風情の家族づれが多い。

日本人はおろかアジア人がめちゃくちゃ少ないので、久しぶりに自分がとても目立つ感覚を味わった(パリ市内にアジア系はめずらしくないから、自分がマイナーな存在の気分になることは、まずない)。

12時には強制的に全員が展示場(=滑走路)から閉め出されるので、いったん車の方へ戻って昼食にする。

フランソワの車に便乗させてもらうお礼にと、私が用意した航空機テーマのピクニック「AIR FRANÇOIS機内食」。

半月前からリサーチして練り上げた。

駐車場と会場との距離感やイベントの様子などは今回の訪問でざっくり掴めたので、来年はさらに本格的に、と今から考えている。
こういう遊びは大好物である。

13時半からは航空ショーが始まる。
さっき見た航空機が全て飛ぶのだ(不意のトラブルが無ければ)!
ショーの封切りは、フランス空軍の最新型戦闘機、Rafaleから。

ちょうど食事の最中に、ゴォオオオオオーンと轟音が。
なにごとかと思ったら、目の前の低い位置を、超スタイリッシュな戦闘機が飛んでいるという、非現実的な光景。

7月14日の革命記念日にも飛ぶけれど、こんな間近には見られない。
いやー、ほんとに来て良かった!

フランソワが無線機を用意していたので、パイロット同士のやりとりも聞けた。
グループで曲技飛行では、要所要所でリーダーが「せーの!」みたいにかけ声をするのだ。

時代の古い機体順に次々と離陸し、そのたびにプロのナレーションが入る。
いつの時代のどこの国のどんな飛行機か、何が特徴的か。
小さい子供も多いせいか、噛み砕いた明解な説明で、私のような外国人にもありがたかった。

第2次世界大戦開戦の演出が特に凝っていて、連合国軍各国の戦闘機がそろって飛んだ後、火薬で爆発を再現、日本の零戦とドイツの飛行機が彼方から登場するという…

零戦は素晴らしいメカニックと美しい姿を兼ね備えた名機だと、こちらの飛行機マニアからも高い評価を受けているらしい。飛行時の拍手も少なくなかった。

その後はベトナム戦争から現代の救助用機やヘリコプターまで、ショーはノンストップで18時半まで続いた。

途中でボーイング747、通称ジャンボジェットまで低空飛行したのには、さすがに驚いた。

たとえ空港で働いていても、あんな間近でジェット機が悠々と飛ぶ姿は見られまい(動画はインスタグラムにたくさんアップしてある)。

それと、ブライトリング・ウィングウォーカーズのショーで、飛行中のボーイング・ステアマンの上部主翼に固定された女性が、曲芸ダンスを行うのも圧巻だった。
さ、寒そう… でも遠くからでもハッキリと分かる、華やかな笑顔だった。さすがプロ。

クライマックスには、フランス空軍のPatrouille de France飛行隊の描く、華麗なトリコロールのスモーク。続いて、海軍航空隊のRafaleが隊列飛行。
フランス人は飛行機の操縦が上手いなと、しみじみ感心したり。

風もあってめちゃくちゃ寒かったのに薄着で来てしまって、泣きそうだった(売店で高いフライトジャケットもどきを買いそうになっていたくらいツラかった)。来年はウィンドブレーカーとフリース携帯で行く。

入場+駐機鑑賞の1日券25ユーロ(当日券は30ユーロ)は安くはないけれど、これだけの飛行機を国内外から集めて、パイロットと機体の保険料だけでおそろしい金額だそうなので、納得。いや、むしろ安い方だとさえ思う。

軽食スタンドもたくさんあるし、簡易トイレも用意されているし、売店では普通の書店で見かけないような航空機専門誌が売られていたり、見所だらけのイベントだった。