Saint-Cloudのブロカント | 2015/03

4年前に初めて訪れて以来、ほぼ毎回欠かさず参戦しているパリ西郊外のSaint-Cloudのブロカント。

以前、クルミ割りやナイフを売ってもらった年配の女性が元気かどうか気になっていたのだが、お元気そうだった。去年たまたま見かけなかっただけなのだ、よかった。

銀メッキの柄に象牙の匙がついた、幼児用スプーン。
いかにもアール・ヌーヴォーらしい、流麗な曲線使いの植物模様だ。
この2本は全く同じデザインなのに、微妙に数mmほど大きさがちがうという、昔の手工業品ならではのふぞろいさが良い。

上記スプーンと同じ売り主から買った、古い写真。

中央の白いドレス姿の少女のコミュニオン記念に撮影されたと思われ、各自のハレの日の装いが興味深い。

臭化銀(Bromure d’argent)を感光材に用い、ハガキ用の紙に現像されている。服装や髪型から察するに、時代は1900-1910年頃ではないかと。
女性達の衣装の刺繍や、くるみボタンや布の皺が、高解像度のデジタル画像かと見まごうような克明さで写されている(上の画像だと分かりにくいのだが、実物はとても精細)。

これも同じスタンドで、スプーン2本と写真1枚の会計を済ませた後で見つけた。
売り主の年配女性が最近まで使っていたという錫製のコーヒースプーンが、束で売られていたのだ。

左端は半熟卵用スプーン。コーヒースプーンに比べて小ぶりで、先端に向かって広がる匙部分が特徴。

柄に細かい模様が入っているので、歳を取って視力が弱っても、手触りで「いつものスプーン」の感触が分かって良さそう。

日常品のデザインに求められるのは、機能美やシンプルさだけではないのだ。
物への愛着というものは、触感にも強く結びついている。

大麦糖のキャンディー缶。

手に取って裏返すと、値札シールが貼られていた。予算に合わないのでそっと戻したら、売り主の年配女性(この日、おばあさんのスタンドでばかり買い物をしていた)が缶の裏を見直し、「ああ、値段はこれじゃないですから」と爪でシールをはがしながら、値札の8分の1くらいの価格をボソッと呟いた。

19世紀の物だと思われる。「SVCRE D’ORGE DES RELIGIEVSES DE MORET」と、全てのUがVで書かれているあたりが、さすが1638年創業の老舗。

「おいしくて胃に優しく、喉のイガイガをしずめ活力を与える」飴とうたわれ、製造者はSeine-et-Marne県のMoretの修道院内の老人ホーム。

パッケージは変わったものの、ハートのロゴマークは同じまま、今でも作り続けられている。

最近好きで探している、柄のデザインの凝ったデザートフォークも見つけた。
フォーク部分は新しく替えられているのだが、柄の部分は銀メッキ製。